火山研究人材育成コンソーシアム構築事業

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インタビュー&レポート

草津白根山でフィールド実習を実施しました
(令和2年8月30日~9月4日)


インタビュー&レポート

1.概要

火山学に関する地球物理学や地質・岩石学、地球化学分野の計測・調査技術を活火山の現場で学んでもらうため、8月30日に集合し、8月31日から9月4日までの5日間、群馬県に位置する草津白根山においてフィールド実習を行いました。本コンソーシアムに参画する全国の大学から、地球物理学や地質・岩石学、地球化学を専攻する大学院生18名と教員12名が参加しました。1日目は草津白根山に関する講義と巡検を全体で行いました。2日目以降は、地球物理コース(7名)、地質・岩石コース(6名)、地球化学コース(5名)に分かれて実習を行い、5日目に全体で発表会を行いました。

今回の実習は、実習前後2週間において参加者の検温報告、巡検や調査時のバス・車による移動では乗車率を制限、一人一部屋での宿泊など、十分な新型コロナウィルス感染対策を行ったうえで実施しました。

草津白根山

2.全班共通活動(8月31日)

 初日の午前中は、3つの講義を実施しました。

【講義】「草津白根山の形成史」

石﨑泰男教授(富山大学)が、草津白根山の全体像を主に地質学的な観点から紹介しました。草津白根山における、小規模火山体の形成と崩壊、大規模火砕流の発生、溶岩流の流出や火砕丘の結成など、地形発達史や火山地形・噴火様式の特徴について講義しました。また、2018年に本白根山で発生した噴火について、火口近傍などにおける堆積物調査に基づき明らかにされた噴火の推移過程についての解説がありました。

【講義】「草津白根山の火山活動」

 寺田曉彦講師(東京工業大学)が、草津白根火山観測所で実施している、地球物理学的・化学的手法に基づく2018年噴火も含めた草津白根山の火山活動に関する観測研究について紹介しました。草津白根山の地下浅部構造について、地下の熱水の上昇を抑制する透水係数の小さい媒質からなる「キャップ」構造など、観測によって明らかにされてきた熱水系の特徴を解説しました。草津白根山における今後の観測計画の紹介もありました。

【講義】「⽕⼭遠望・⽕⼝監視カメラの構築による⽕⼭観測の取り組み」

火山研究人材育成コンソーシアムに今年度から参画している株式会社NTTドコモの⼤⽯恭裕様が、「NTTドコモの⽕⼭観測の取り組み:⽕⼭遠望・⽕⼝監視カメラの構築」について紹介しました。気象庁の火山観測で導入し、草津白根山でも運用している遠望・火口観測システム、地点調査・設計・申請・工事などの観測点ができるまでの工程、火口での作業における安全対策の取り組みに関する解説がありました。


草津白根山巡検

講義の後、大型バスで草津白根山の巡検に出発しました。まず、年代の異なる溶岩流の境界付近である天狗山駐車場近くで、氷谷風穴と溶岩地形の観察を行いました。予報に反して天気が回復し、草津白根山を横断する道路の閉鎖が解除されたことから、草津温泉から山頂方面に向けて出発しました。車窓から殺生溶岩などを観察し、火山活動の影響で現在は停車が禁止されている山頂の湯釜付近を横断した後、渋峠の国道最高地点に到着しました。本白根山の2018年噴火地点など、草津白根山全体を眺望することができました。その後、草津白根山の西側に位置する万座温泉に降りていき、車窓から変質帯を観察し、噴気活動がある万座空噴に到着しました。天気に恵まれ、計画通りの充実した巡検を実施することができました。

国道最高地点から望む草津白根山
万座空噴


3.各班の実習(9月1日〜3日)

● 地球物理コース班

 1日目には、神田准教授(東京工業大学)から、火山体構造を電磁気学的に調べる地磁気地電流法(MT法)についての講義がありました。観測方法の概要と機器の設置方法について説明を受けたのち、早速、観測に出かけました。草津本根山南麓の石津溶岩流上の数十メートル四方の平地に、東西南北方向に4個の電極と東西南北および鉛直方向に3台の磁気コイルを埋設しました。各センサーの信号ケーブルをデータロガーに接続し、観測を開始しました。午後には、機器を背負って林道を15分ほど歩き、本白根溶岩の上にMT観測装置を設置しました。

2日目には、火山体を構成する多様な火砕堆積物や熱水により大きく変化する地下の比抵抗の空間分布を推定するMT法の原理の講義がありました。1日目に設置した機器から半日分のデータを回収し、MT法による解析方法を習得しました。3日目には、2日間のデータを回収し、鉛直方向のみに比抵抗が変化する1次元モデルを仮定して、得られたデータを説明できる地下の比抵抗分布を推定しました。


● 地質・岩石コース班

1日目は、中川光弘教授(北海道大学)による火山地質概論、伴雅雄教授(山形大学)による火山地形の講義、 石﨑泰男教授(富山大学)による浅間山巡検コースの説明を受け、10時過ぎから野外へ出発し、鬼押し出し園周辺、鬼押し出し溶岩の観察を行いました。午後は、吾妻火砕流堆積物と鎌原岩屑なだれ堆積物の観察を行いました。

2日目は、石﨑教授による講義を受け、草津白根山の青葉山方面へ移動し、青葉溶岩の上にテフラが良好に保存されている露頭で、各種テフラ層の特徴を把握するとともに、柱状図を作成しました。次に、殺生河原へ移動し、溶岩堤防、溶岩じわ、噴気帯を観察しました。午後は、テフラ観察のまとめと実体顕微鏡の組み立てを行いました。

3日目は、大場司教授(秋田大学)による爆発的噴火と火山砕屑物の生成過程や特徴についての講義を受け、その後、齋藤武士准教授(信州大学)の指導のもと、比較用の火山灰試料(桜島や十和田など)を用いつつ、草津白根火山の火山灰の実体顕微鏡観察を行いました。その後、2017年度の草津白根フィールド実習で得たXRDチャートの解析(鉱物同定)を行いました。


● 地球化学コース班

1日目は、森俊哉准教授(東京大学)の指導のもと、火山ガス測定の実習を行いました。まず、「火山ガス放出過程の観測」に関する講義と、今回の実習で噴気ガスの化学組成を測定するために使用するMultiGASという装置についての解説がありました。東京工業大学草津白根火山観測所において装置の較正作業を行った後、野外観測に出発し、草津白根火山の東山麓に位置する殺生河原の噴気地帯において測定を実施しました。噴気孔からの距離を変えることで変動するガスの濃度や、地表面からの流出ガス成分濃度を測定することができました。その後草津温泉に戻り、湯畑付近の温泉地域で発生している噴気の測定を行いました。

2日目は、野上健治教授(東京工業大学)の指導のもと、温泉水測定の実習を行いました。朝、草津温泉街に集合し、西の河原で温泉水の採取や温度測定を実施しました。観測所に移動後、「化学で解読する火山活動」と「火山ガス災害」に関する講義が行われました。その後、火山活動の一部である温泉水のpH計による水素イオン濃度の測定とイオンクロマトグラフィーによる陰イオンの測定を実施しました。測定の前段階として標準液を用いた検量線の作成を行った後、複数の場所で採取された温泉水について分担して試料作成と分析を行いました。

3日目は、1日目に取得した火山ガスのデータに基づき、噴気や土壌の二酸化炭素と硫化水素ガスの組成比を推定し、場所や測定環境による違いを調べました。また、2日目に取得した温泉水のデータに基づき、草津白根火山湯釜火口の湖水の測定値との比較などによって、温泉水の起源や火山活動との関係を調べました。

4.発表会・講評

最終日の9月4日は、実習内容をまとめた発表会を行いました。地球物理学コース 2班、地質・岩石コース2班、地球化学コース2班のグループに分かれて実習の成果を口頭発表し、各班の発表に対して質疑応答が交わされました。最後に教員による講評が行われました。